別れ

別れは悲しみを蘇らせる

アリゾナに引っ越してきて初めて親しくなった日本人ご夫婦がアメリカを離れ日本に永久帰国することになりました。ご主人のお母さんが入院してからずっとアリゾナと日本を行ったり来たりしていたのですが、ここ数年は二年に一度ほんの一月ほど米国の永住権の喪失を避けるためにアリゾナの自宅に戻るだけでした。

「アリゾナのこの我が家が終の棲家と決めたからこの家は手放さない」と二年前に一時アメリカに帰省されたときに話していた彼女ですが、日本の暮らしが六年と長くなり、ご主人のお母さんが亡くなった後残された90歳のご主人のお父さんを一人置いてアメリカに帰国することもできず、かと言ってこれ以上親の介護を理由にアメリカ長期不在のまま永住権をキープすることも難しくなり、とうとうアメリカの暮らしを諦め、ご主人ともども日本に完全帰国することに決めたのでした。

二十代前半、ご主人のアメリカ転勤に伴って移住し、それから四十年近くアメリカで暮らし、人生の半分以上をアメリカで過ごしたお二人でしたが、お子さんがいないこともあってアメリカに残る理由もなく、また日本では仕事を通し交友関係もでき、60歳を超えた今、健康面などを考慮するとやはり、兄弟姉妹、そして社会福祉が充実した日本での生活が安心だと、老後の生活は日本と決めたようでした。

この数年間は、日本でお暮らしでしたので、今回永住帰国を決めたと言っても、今までも一年に一度会えるか会えないかでしたので現実的にはこれまでと大して変わりはしないのですが、心情的にはやはり『これでお別れなんだ、おそらくもう二度とこれまでのような付き合いはできないだろう』と、思うと寂しさと悲しさがつのります。

『生きているのだから、娘のときとは違うのだから・・・』と、頭までは分かっていても、娘を失った時の感情の切れ端がさざ波のように立って、心が沈みます。

いい年して、友達と別れるのが辛いというのもなんですが、異国の地で、家族もなく、子供も失った私にとって家族のように接してくれたお二人を失うことはやはり辛いです。

みんな夢と希望を抱いて故郷日本を離れアメリカに渡って来た若者たち。何十年暮らしてもアメリカはやはり母国にはならないのか、最後は家族、親せきのある日本で骨を埋めたいと、70歳過ぎてから日本に帰る方もいらっしゃいます。

私は、その中にあって四十歳を過ぎてからアメリカに渡った異色の存在です。日本での安定した暮らしを捨て、今の夫と再婚しアメリカに渡りました。若い頃に果たせなかった大学進学の夢をアメリカで果たし、アリゾナで暮らして12年目。その間に色々なことがありました。別れも沢山経験しました。でも、なんといっても耐えられないほど辛かったのは、子供を亡くしたことでした。

幸せとはなんだろう、と、ふっと虚しく考える時があります。

それでも、どんなにしても過去に戻ってやり直すことはできず、例え過去に戻ることができたとしても、その時の自分はこれから将来に起きることは分からないわけで、結局同じ未来を経験することになるのだと思います。そうだとしたら、悲しい過去は一度経験するだけでいい。

今回、日本に永住帰国すると決めた私の友達は、日本で生きがいを見つけました。彼女にとって、日本での日々の生活は、のんびりとしていたアリゾナの生活とは大違い。狭いアパートでご主人と二人暮らし。毎日パートの仕事で忙しく、またご主人のお父さんの世話もあり、アリゾナ生活と違って愚痴の多い暮らしなのかもしれません。実際、今回会ってランチを一緒にした時も、愚痴がいっぱい飛びだしていました。それでも、そんな彼女はアリゾナにいる時より活き活きして見えました。ご主人もそうです。毎日、満員電車に揺られて都心まで通い、一日仕事に追われて、家に帰っても寝るだけの毎日でも、アリゾナでリタイア生活より、その方が毎日刺激があり日々の生活にもはりがあって充実しているのでしょう。

幸せとは本当に人それぞれなのだと思った瞬間でした。

では、私はどうかと考えると、そもそも私はもう昔のようには働けない。娘を失い心だけではなく頭も壊れてしまった私には責任のある仕事は、精神的にも体力的に無理となりました。

そのことを認めることは新たな喪失でしたが、受け入れたら出来もしないのに無理して頑張る必要も無くなりかえって楽になりました。

家族を失った私は、毎朝一人もくもくと庭仕事をし、ヨガや瞑想で心の平穏を得、亡くなった娘を思いながら外を眺め、静かで、でも心満たされる時間を大切にし、お迎えが来るまで、たんたんと一日一日を過ごせたら、それで満足です。出来たらそんなに待たずにぽっくり逝けたら、なおいいのだけど、こればかりはどうにもならず・・・

先のことを考えたら不安は尽きないけれど、過ぎたことを考えても今の私には何ももたらさない・・・

仕事をしていないから贅沢はご法度。質素倹約をむねとし、知恵と工夫を働かせ、お金をかけずに日々を充実して暮らす。

多くは望みません。

今の私が出来ることに小さな喜びを見つけることが、今の私が生きていく方法です。

そして、そうやって、今日一日、この日、この場所で、花をめで、空を見上げて遠い彼方の娘と心を通わすことが出来たら、これに勝ることはないのです。

ああ、それでも、やっぱり旧友との別れは悲しい・・・

それは、私が心ある人間だという証。

そして、何よりも、別れに先立ち「さよなら」を言えることがありがたい・・・

四十度を超える夏の暑さにも負けず、生き生きと咲くバードオブパラダイスの花です。

 

別れ」への7件のフィードバック

  1. やっぱり夢に出てきてくれるのは嬉しいですね。
    かさねさんもきっと一緒にいますよ。
    ママ達話が長いから絵を描いて遊ぼう。なんて言ってるかもしれないですね。
    そういえば保育園の頃の智也の絵は
    じゃがいもみたいないびつな楕円形に手足が生えてる人だったのに、中学生の頃は
    マンガのキャラクターなんかをシャシャっと書いてました。
    成長していたんだなぁ。

  2. Kikiさん

    お友達との別れは悲しいですね。
    生きていたらまた会えるけれど、遠いですよね。
    お友達は、日本に帰られて活き活きしてるとのこと、幸せは人それぞれ…ですね。
    娘は日本は生きづらかったのでしょう。
    短期ですが、スペインに留学していた時、本当の自分になれて幸せ、誰の目も気にならない、楽しくて仕方ない、帰りたくない、と言ってました。帰って来た娘は活き活きしていました。
    そんなにそちらがいいなら、大学卒業後、行ったらいいよ、と話したこともありました。
    色々な可能性があったのにと悔やまれます。

    生きていると、これからも沢山の別れがありますよね。もう誰とも別れたくありません。
    長生きはしたくありません(^^)

    • 新月さん、お嬢さんは、スペインの国が肌に合っていたんですね。
      じゃあ、今頃はスペインと日本を瞬時にいったりきたりしているのかな・・・

      新月さん、「もう誰とも別れたくない、だから、長生きはしたくない」と言う気持ち、私も同じです。
      見送るのはもう嫌です(^_^;)

  3. kikiさん、
    せっかく知り合ったのに別れなきゃいけないって寂しいですね。
    私も静岡県で知り合い、宮城に帰った友達がいます。
    別れる時は大号泣でした。
    妹みたいに思っていたから。
    今は年に数回ラインや荷物のやり取りがあります。
    離れていても気持ちは繋がっていると思います。
    別れは寂しいですが次に会う事を考えるとちょっと楽しみがあります。

    • ありがとう、由紀子さん。
      そうですね、離れていてもまた会おうと思えば会えますね。
      別れはどうしてもあの日の気持ちが揺り動かされて辛くなりますが、友人の新しい門出を笑顔でみおくってあげようと思います。

      • kikiさん、
        とても不思議な夢を見ました。
        智也と私と智也のお父さん(元夫)と
        アメリカに旅行に行く夢でした。

        元夫は行きの飛行機だけ一緒で帰りの空港で待ち合わせ後は別行動。

        小学生か中学生の間くらいの智也と手を繋ぎ
        アメリカの観光地を巡り、アメリカに後3日いられるって日にkikiさんと会う夢でした。
        夢の中のkikiさんは智也にも私にも優しく
        いろんなお話を2人でマシンガンのようにしているのを智也がニコニコ聞いている。という夢でした。
        何となく起きた時幸せな気持ちで
        智也からの いつも近くで見ているよ。 ってメッセージなのかな?と思いました。

      • 由紀子さん、わ~なんだかリアルな夢ですね! )^o^(
        本当、由紀子さんと私がこうしておしゃべりしているのを、智也君がニコニコしながら聞いているのかも、と、思ったらちょっとかしこまってしまいました(笑)
        私もほんわか幸せな気持ちになりました。
        素敵な夢の話をシャアしてくださりありがとう~(*^o^*)

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