グリーフ(喪失に伴う悲嘆)が脳に与える影響とその対処方

喪失は心だけではなく脳においても衝撃的なできごと

先日たまたま見つけたアメリカNBC放送が作成したユーチューブビデオを見ていた時のことです。

娘を亡くしてから経験したことが『なるほど、そういう事だったのか・・・』と、科学的に説明がつき納得でした。中でも、興味深く感じたのは、ビデオの最後の方に出てくる「長期にわたる悲嘆は、実は、神経細胞と脳の報酬中枢を活性化させる」という研究結果でした。これは、以前参加した一年に一度開催される自死遺族カンファレンスの中の特別講演の内容とも一致するものでした。なぜ、私が「報酬中枢の活性化」に好奇心をそそられたかと言えば、報酬中枢の活性化が免疫機能を高めるのではないかという研究結果があるからです。
(参考:「報酬中枢の活性化がマウスの免疫機能を高める」Nature Medicine 2016年7月5日

もし、これが事実としたら、辛くとも悲嘆と向き合うことは長い目で見たらそう悪いことではないのかもしれません。また、報酬中枢は、快楽中枢とも解釈できるので、もしかすると長いグリーフ・ジャーニーの先には喜びが待っているのかもしれないなどとも思いました。

こちらがそのビデオです。ただ、残念なことに日本語訳がついていません。ユーチューブビデオですので、製作者が許可を与えている場合、視聴者がボランティアとして字幕を付加できるのですが、こちらは許可が与えられていませんでした。そこで、英文の字幕と私の翻訳をビデオ下に載せてみました。もし、よろしければご覧ください。

How Grief Affects Your Brain and What to Do About It
グリーフ(喪失に伴う悲嘆)が脳に与える影響とその対処方

When we’re grieving a profound loss, we often say we’re heartbroken, but it might be more accurate to call it brain broken given the role the brain plays in grief.
大変辛い喪失を経験し悲嘆にくれているとき、悲しみに打ちひしがれると良く言われますが、悲嘆に暮れている時の脳の状態を見るとき、脳が打ちひしがれると表現する方がより適切かもしれません。

As your brain adjust to the loss of someone you love, you might feel numb, depressed, or foggy, but moving through the stages of grief is natural and healthy.
愛する人の喪失に脳が適応する過程で、無感覚、鬱、混乱といった感情を抱くかもしれませんが、そのような過程を経験することは自然であり健全な事です。

It helps you process your loss and begin to move forward over time.
徐々に喪失を現実ととらえ前に進むための助けとなります。

This is your brain on where we explore how the world affects our brains and ourselves.
これが脳です。どのように脳と私たち自身に影響を与えるか見てみましょう。

The experience of grief is twofold: the immediate acute pain of the loss and the months afterward as you mourn.
悲嘆には二つの側面があります。喪失直後の鋭い痛み、そしてそれに続く何か月もの嘆きです。

The loss of someone meaningful functions as a stressor triggering the pituitary gland at the base of the brain to produce adrenocorticotropic or ACTH.
大切な人を失うという精神的打撃は、脳の基幹部にある脳下垂体を刺激し副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を出します。

ACTH sends a signal to the adrenal gland to release cortisone a stress hormone.
ACTHは、副腎にストレスホルモンのコチゾールの分泌を促す信号を送ります。

Unlike, say a temporary threat, grief is an intense persistent stressor so your body remains flooded with cortisone that can cause your immune system to falter making you feel rundown.
一時的な脅威とは異なり、悲嘆(グリーフ)は強度でかつ持続する有害因子(ストレッサ―)ですから、体が大量のコチゾールにさらされる状態にとどまることとなり、免疫系を衰えさせその人を疲労させます。

This is likely why some bereaved spouses fall ill soon after their partner dies..
配偶者を亡くした人がその後すぐに病気になるのは恐らくはこのことに起因しているのでしょう。

Even if the death of your loved one was expected, the actual event can still feel like a shock to the system.
たとえ愛する人の死が予期されていたことであったとしても、実際に死を目の当たりにすることは免疫系にとって打撃となりえます。

In the short term, a traumatized brain is bottom-heavy, meaning primitive areas including the fear center are overactive, adding to feelings of stress and despair.
その間、衝撃を受けた脳は下部が重い状態、つまり、不安をつかさどる扁桃体を含む脳の底部にある進化的に古い視床下部が過剰反応状態となり、ストレスと絶望感を助長します。

Meanwhile, higher cortical areas of the brain are under active like the anterior cingulate cortex which helps regulate emotion.
一方、前帯状皮質といった感情を抑制する前頭前野の働きが弱まります。

You may find it difficult to let go of minor annoyances or experience symptoms like increased heart rate for several minutes after you’re startled.
ちょっとしたいらだちをいつまでも引きずったり、びっくりした後に心拍数が上がりその状態が何分も続くといった経験があるかもしれません。

However, over time the initial shock of the loss typically gives way to a deep sadness or depression as you continue to mourn
しかし、死を悼むにつれ、たいてい喪失初期のショックは、時の経過と共に深い悲しみや鬱にとってかわります。

Depression can cause widespread changes across several parts of the brain including the amygdala which regulates sleep behavior and mood in the hippocampus which processes memory and regulates stress hormones.
鬱は、睡眠をつかさどる扁桃体、記憶やストレスホルモンの分泌の調整に関与する海馬などといった、脳の広範囲にわたる部分で変化をもたらします。

These changes disrupt core functions of our bodies and minds.
このような変化は、心身の核となる機能を乱します。

As you grieve, you may find yourself sleeping too little or too much, forgetting things, or trapped in a brain fog.
悲嘆にくれる中で、ある人は、睡眠時間が非常に短いまたは反対に長すぎる、物忘れ、頭に靄がかかった状態が続くなどといった経験をするかもしれません。

These feelings are difficult, but the acute pain doesn’t last forever.
このような気持ちは辛いものですが、鋭い痛みは永遠に続くものではありません。

Eventually the sadness begins to lift, at least a little bit, and then you may move on to feelings of anger or guilt before slowly moving toward acceptance of the loss.
いずれ、少なくとも悲しみはいくらか和らぎ、そして怒りや自責という感情に移行したのち、ゆっくりと喪失を受容する段階へと進みます。

Experts agree the bereaved follow their own individual timelines, but, in general, this three-stage process usually takes about a year.
人によってこの期間は異なるというのが専門家の間では通説となっていますが、一般的にこの三段階の過程は約一年かかります。

There are steps you can take to feel better as you go through the grieving process.
悲嘆の過程を進める上で、気持ちを楽にするための手段がいくつかあります。

Talk therapy can be a major help.
カウンセラーに相談することは大きな救いとなるでしょう。

This might be group bereavement meetings or cognitive behavioral therapy which can redirect negative thoughts.
喪失を経験した人たちの集会や、負の思考を変えていく認知行動療法が役に立つかもしれません。

Aerobic exercise can improve mood, memory, and thought processing.
有酸素運動は、気持ち、記憶、そして思考プロセスを改善すると言われています。

Talking with friends about the person you lost can be a great comfort too.
亡くした人の思い出を友達と語ることもとても良い慰めとなるでしょう。

Studies show long-term grief actually activates neurons and the reward centers of the brain, and recalling the time spent with those who have died reminds us that the memories still live on.
研究結果から、長期にわたる悲嘆は、実は、神経細胞と脳の報酬中枢を活性化させるとわかっています。今は亡き人と過ごした時間を思い起こすことは、記憶は共に生き続けることを私たちに気付かせます。

 

グリーフ(喪失に伴う悲嘆)が脳に与える影響とその対処方」への17件のフィードバック

  1. kikiさん
    「どこで間違えたのだろう」は毎日自問してることです
    問えば問うほど難しくなり、頭がおかしくなりそうです
    娘の手をいつ離してしまったのか、娘の心の声に耳を傾けてあげられなかったのは自分の怠慢「タラレバ」は永遠に続く自分への責め…確実に学んだのは自分自身を許すことが一番難しいこと。
    親だから娘を分かっている気でいた奢り、ごめんなさい…二度と同じ事をしないので悪夢から覚めさせてくださいと祈ってます
    まだまだ悪い夢をみているような現実味のない世界をフワフワと漂っている気分です
    最後は自分はどんな悪行をしてきた報いを受けているのだろう…何故自分ではなく娘の命だったのだろうと一生悩み苦しんで暮らすのですね。
    それを受け入れていく諦めみたいな覚悟は出来つつあります

  2. Kikiさん、さすがアメリカというか着眼点も洞察も合理的というか。悲嘆の中にあっても、ヒトや生物が基本的に「生きよう」とするものなのだな、と思いました。
    なんていうか、楽になりたい、幸せになりたい、とも確かに思うし、だけども最期の時まで何かを欠落させたままなのだろうなとも思います、私の場合は。
    誰かがいなくなっても淋しいし、誰かといても淋しいし…これが私の望んだ人生なんだろうか?でも、魂が望んだ学びなのかな、と思い込むことでなんとかしのいでいたりします。
    あまりにもビターなことがあったから、少しの甘味も敏感になったとは言えそうですね。
    変な話、向こうの世界で「あぁやっちゃった、ま、いっか」と笑って次の課題に行ってくれてるといいな、と思います。

    • とり子さん、私も同感です。
      人間も動物、基本は「生きる」と脳の原始的部分にプログラミングされているのですよね・・・
      寂しさは、人と繋がりたいという裏返しなのかもしれないなあと思います。
      寂しさを感じなかったら・・・、それは人として大切な感情を欠くことなのでそれもまた寂しいかなあと思ったりもします。
      おかしいですね(^_^.)
      魂の学び、素敵な言葉です。
      私たちの子供たちもあちらの世界で私たちと同様、魂の学びにはげんでいるのかもしれませんね。
      う、ふ、ふ、ほんと、かさねも「あれれ、また、やっちゃった~」と笑っているように思います。

      • とり子さん、
        誰かと居ても寂しいってわかります。
        私の場合は私の魂の居場所がない。
        って思うのですが。
        息子もそんな風に思ったのかもしれないですね。
        ありゃ。やっちゃった。
        まっ、いっか。
        口癖でした。
        まっ、いっか。

        生きる為にプログラミングされているのか。
        学びながら生きてみますか?
        お迎え来てくれるまで。
        早めにきて欲しいですが、
        準備があるからね。なんて仏壇に話しかけています。

      • 由紀子さん。なんとなく居場所がない、なんとなく死にたい、そんな思春期を過ぎた私は、娘が死んだ後、娘は死に、私は生きてきてしまったその差は何だろう、とずっと考えていて…。答えは出ないけど、今現在こうして生きていること自体が多分答えなんだろうと思っています…。

        ま、いっか。と生きてる間には思えなかった娘、そして私。

      • とり子さん、
        わたしもそうでした。
        なんとなく実家には居場所がない。
        早くに結婚して家を出たけど、そこも違う。
        そんな繰り返しでした。
        小学生の息子と2人で暮らしたアパートが心安らぐ唯一の居場所だったのかもしれないです。
        ほんとに、どこで間違えたんだろう?
        わたしも、息子も。
        答えはなかなか出ませんね?
        とり子さん、ちゃんと眠れてる?
        ごはん食べれてる?
        温かいもの食べてあったかくして風邪なんかひかないようにね。

      • 由紀子さんもとり子さんも美響さんももさんもママンさんもしろちゃんも、それからそれから、うーんとうーんと(名前が思い出せない~!)、みんなみんなとっても優しくて私から見たら最高のお母さんたちなのにー・・・
        ほんとに、どこで間違えたのでしょうね、私たち・・・
        答えは見つからないけれど、私たちはその時の私たちができるベストを尽くしていたということだけ・・・
        そして、わが子だからと言って、全てを親がわかるということは不可能なのだという事なのかもしれませんね・・・

      • Kikiさん、毒親に毒づいてきた私が、毒を吐くのを躊躇うようになり…自殺なんて絶対ダメと思ってたのがそれも生き方死に方の一つかと思うようになり(あくまでも私だけの思い)、理論的に考えればあれは止められた出来事だと思うけど、人の理論を越えたもの差がこの世にはあるのだろうと思うことにしつつある今の私です。

      • あ、途中でいっちゃった。
        今の自分を、ダメなとこも含めて孤独も含めてよしよししたいけれど、もう少しだけ強くなりたいな、とも思います。
        Kikiさんに、とてもお世話になってる。SNSのおかげで生き延びたと思います。ありがとう!今食べた朝食のあたたかさも、昨日見たイルミネーションも、みんなにシェア出来るといいのに。Kikiさん、少し早いけどMerry christmas !!

      • とり子さん、こちらこそお世話になってます。
        本当に、本当に・・・
        こちらこそ、ありがとうございます。
        とり子さんにとって2019年が少しでも心穏やかに過ごせる日が多くなる年になることを祈ってます。

      • 由紀子さん、いつもいつもありがとう。この一年、Kikiさんのこの場所に、由紀子さんの言葉に助けられてきたなぁ…。眠れてます。食べれてます。薬は必要だけど。窓の外、光を見て、きっと今は今で私は幸せなんでしょうね。
        生きろ、って言われてるような気はするんです。そんなタイミング。涙出るけども。
        今、たまたま東京です。発作とにらめっこしながら(笑)。一人の淋しさと自由さ。

      • とり子さん。
        こちらこそありがとう。
        とり子さんが生きていてくれるだけで
        嬉しい。
        ここにいるみんなそう思ってますよ。

  3. kikiさん
    読ませて頂いて何度も読み返しながら、そういう事なのか…と納得したり娘の亡き後の人生を以前より良く生きる為の過程だと脳の力が作用してるのはちょっぴり寂しい気持ちになったりもしてます。
    鬱になったり、怒りがこみ上げてきたり…当たり前のことなのですね。
    それでもやっぱり娘に会いたくて迎えに来てくれる日が待ち遠しいです。
    空の上から「ママ、しっかりして」と叱られそうです。

    • 美響さん、お嬢さんは「しっかり」という代わりに、きっと「ママ、大好き」と言っていると思いますよ(*^_^*)
      お迎えが来るその日は明日なのかそれともまだまだ先なのかわかりませんが、その日は必ず来るから、亡くした子も含め愛する人との繋がりを大切に、今日という日を大切に生きよう思えるようになってきました。

  4. kikiさん、
    わかりやすく説明してくれてありがとう。
    先日、バーバラさんが亡くなり、
    パパブッシュも亡くなりましたね。
    きっと、寂しくて仕方なかったのでしょうね。
    日本では、朝丘雪路さんが亡くなり、
    津川雅彦さんが後を追うように亡くなりました。
    多分、男の人の方が弱いのでしょうね?
    私、最近思うのです。
    悲しみ、辛さは薄れている。
    寂しさ、恋しさはあるけども。
    笑ったり、楽しんだりすることが多くなったと。
    忘れたわけじゃないです。
    ちゃんと心の中に息子はいるんです。
    今まで通りいるのです。
    でも関わり方が少し変わってきている。
    これは自然な事なのかな?

    • 由紀子さん、そうですね、喪失に関しては男の人の方が『男だから人に弱みは見せたくない』と、グリーフ対処法、例えば、ビデオにもあった「友人に気持ちを話して楽になる」などができず、ストレスが長期化してしまい健康を損なうのかもしれませんね。
      そうなんです、ここ数日アメリカではハパブッシュの葬儀関係ニュースで溢れています。
      その中で心打たれたのは、息子のブシュ元大統領が、声を詰まらせ亡き両親とロビンちゃんの事を語った時でした。
      ロビンちゃんは、癌で三歳で亡くなったブッシュ氏の妹さんです。
      何十年たっても亡くした愛する人は心の中に住んでいて、ブッシュ氏の涙となって表現された瞬間でした。
      パパブッシュ夫妻は、ロビンちゃんの隣に眠ることを希望し、そのように墓地を生前に用意していたと聞いています。
      同じですね、私たちと。
      忘れたわけじゃない、今まで通りいつでも心の中に住んでいるけれど、新しい絆が結ばれ関わり方が変わっていく・・・
      それは、自然な事なのかもしれませんね。

      • そうですね。
        パパブッシュもバーバラさんも
        ロビンちゃんの隣で笑ってるといいなぁ。
        ロビンちゃんに、パパもママも頑張って生きたね。誇りに思うよ。って言ってもらってるかなぁ。
        そうだったらいいなぁ。
        ブッシュ元大統領も続けて父母が亡くなり
        喪失感は相当ですね。
        周りにサポートしてくれる方がいるといいなぁ。
        智也との関わりは、生前は心の真ん中。
        智也にとって何が一番いいのか?だったけど、今は真ん中だけど、一緒に1番いい方に行ければいいな。
        ってなってます。
        仕事も、生活もなるべくいい方に導いて。って感じです。
        甘えん坊のお母ちゃんです/(^o^)\

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