生涯学習

耳鳴りとバックグラウンドミュージック

少し前に大学時代の友人と生涯学習講座に参加してきました。

生涯学習講座の参加条件が50歳以上ということもあり、今回の講座は「難聴と並行感覚」という年齢と共に気になるお話ということで参加者の平均年齢もいつもよりうんと高めで55歳の私でも「若手」の部類に入るほどでした。

かくいう私自身も最近「良く聞こえない」ことが原因による英会話中の誤訳が気になっていましたし、夫も子供の頃にかかった中耳炎をきちんと治療せずに放置したことが原因による難聴が年と共に悪化してきていたのでタイムリーな講座内容でした。

「へー、そうなんだ~」と、耳鼻科の専門医が説明していた中で特に記憶に残ったことがありました。

それは、耳鳴りとバックグラウンドミュージックとの関係でした。

先生の話によると、お年寄りの耳鳴りの原因の多くは、内耳の感覚細胞に障害があり、本来大脳に届くべき音の信号が入ってこないので、大脳が「感度が悪くて聞き取れていないのかな?」と誤解し聞き取ろうと感度を増幅している状態なのだそうです。ですから、実際は何も音がしていない場合でも、大脳は信号を受け取ろうとして頑張るため「キーン」というような不快音が頭の中でするのだとか。

また、難聴が原因の耳鳴りの治療は困難なのだそうですが、自分で簡単にできる対象法があり、それが「いつもバックグラウンドミュージックを流しておく」という意外なものでした。つまり、音がない状態だと脳が余計に感度を増幅しそれによって不快な音が聞こえるのであれば、いつも何か音を聞いていれば良いという事です。

『へー、面白いなあ、他の音に注意を向けさせることで神経の興奮(感度増幅)を押さえるってことなのか~』と、感心して聞いていました。

でも、この音がガンガンとなる大音響では機能している神経系まで破壊してしまい反対に聴力障害を起こす可能性があるので、それも気をつけないといけないのだそうです。あくまで静かな音、気にならない程度の心地よい音が良いのでしょうね。

この話を家に帰って夫に話しているときにふっと気が付いたことがありました。

『あれ、これって、悲嘆との共存と似ているかも・・・』と思ったのです。

私は、4年前に娘を自死で亡くし、心に決して癒えることのない障害を抱えているといっても過言ではありません。耳鳴りが有毛細胞の障害など、「聞くため」の機能損失による難聴が起因して発生するように、私の悲嘆も娘の喪失に起因しています。有毛細胞の損失により発生する耳鳴りが完治が望めないように私の悲しみはも決して消えることはありません。そして、日々の暮らしで注意を向けるものが何も存在しないと考えることはついつい失くした娘のことばかりに気を取られ、今、この空間には存在しない過去の「無い音」を読み取ろうとして悲嘆が増幅されてしまいます。そんなとき、何か無理なく楽しめるものを生活に取り入れるとバランスがとれて心の痛みが和らぎます。

でも、これが辛さから逃避するための度を越したもの、例えば朝から晩まで仕事やそのほかのことで休む間もないほど予定を入れて忙しくする、などすると喪失の痛みと共存するどころか、反対に心身ともに疲れ切って体を壊したり精神を病んでしまい、喪失に伴う悲嘆からの回復がより一層困難になってしまったり、もしくは再起不能事態に陥ることになってしまいます。

こんな失敗が一年目の私にはありました。

余りに苦しく辛く堪えがたいと感じ、その痛みから逃げ出すために何か他のことに集中しようと、娘を亡くす前にしていたウェブサイト作成の仕事を事業が波に乗らず苦労していた知人から無料で請け負ったのです。人助けのつもりでした。

確かに必死に作業に取り組んでいるときは娘を亡くした痛みを感じなくて済みましたが、結果は最悪でした。その知人は私の娘の死のことも知っていましたが、子供を亡くした辛さを理解してくれるどころか、娘の死はなかったかのように毎日のように進捗状況を確認してきては追加の作業を要求してきました。そこには、私に対するいたわりの気持ちは感じられませんでした。そして、そんな知人に怒りさえ覚えるようになっていきました。

なんとか仕上げたものの、気力体力を使い果たし、わずかに残されていた悲嘆と向き合う力も失いました。それと同時にそれまで無視していた心の痛みが一気に増大し、社会に対する憤りも加わり絶望と無力感で何もできなくなってしまい毎日泣き暮らすだけのゾンビのような状態になり、挙句の果ては誰とも会えなくなり完全な引きこもり状態、そして複雑化した鬱へと移行してしまったのです。

余りに度が過ぎる音響は耳鳴りを押さえるどころか聴力障害を起こす・・・、私の場合も同じでした。度が過ぎたために、悲嘆の痛みと共存するどころか、反対に害をなしてしまったのです。

『ガンガンやったら、以前のように頑張れるに違いない』などと、アホなことを考えて無理した結果がこのざまでした。

喪失、それも子供を自死で失った親の回復過程は大変時間がかかり、忍耐が必要だと気が付いたのはそれから四か月が過ぎてからでした。

今は気にならない程度の心地よいことにとどめて支障がでないところで痛みとの共存を図っています。耳鳴りが自分だけに聞こえるもので、他者には全く聞こえずその苦しみが理解できないように、子供を失った心の痛みは自分だけが感じるもので他者には感じられません。ですから、自分で自分の心地よいを音量を探さなければいけません。

「心地よい、でも、無理しない、頑張りすぎない。そして、出来ない自分に寛容であること」これが今の私の物事に取り組む際のキーワードです。

お料理は私の癒しの時間です。これは、最近友人から教わったドレシングのレシピです(*^_^*) でも、それでさえ「嫌でもやらなくちゃ」となるとストレスになり「こんなに頑張ってるのに、感謝の言葉の一つもない」と沸々と怒りが込み上げてくることになるので、疲れたら手抜き。「今日はバーガーキングにしよう!」と夫に言います。たまになら、夫も近所のファーストフードでもニコニコです(*^_^*)

生涯学習」への17件のフィードバック

  1. kikiさん、2日間同じ夢を見ました。
    保育園の頃の智也が、私が仕事に行こうとすると携帯で写真を一緒に撮ろうとぐずるのです。
    ん、もう。時間がない時に限って…。
    と思うのですが、いや、時間はある。
    と思い直し膝に入れて写真を撮ります。
    今日は行かないよ。って言うとにこにこ
    笑って一緒に遊ぼう。
    お母ちゃん、お絵描きしよう。
    などと言っておもちゃやら、クレヨンなど
    持ってきます。
    気がすむまで遊んでやろう。と思うところで目が覚めます。
    行っちゃ嫌なのかな?

    • 由紀子さん、2日間も同じ夢ですか!?
      それは、それは、何か意味がありそうですね(^_^.)

      「ん、もう。時間がない時に限って…。
      と思うのですが、いや、時間はある。」
      と、いう由紀子さんの言葉が私には胸にしみました。

      智也君、何か由紀子さんに教えているみたいですね。
      なんだろ?
      「遊ぼうよ」?
      気がすむまで遊んでやろう、と、思うところで目が覚める・・・
      うーん、意味ありですね。

      それにしても2日間もかわいい智也君と遊ぶ夢、素敵(*^_^*)

      • そうなんです。
        仕事に行かなきゃいけないのに!って
        焦る自分と、いやいや、辞めたじゃん!って思う自分がいて、そういえば、こんな風に行っちゃ嫌!って言う事なかったなぁ。
        我慢してたんだねー。
        仕事するのまだ早いよ。
        まだ僕のお母さんだけしていて欲しい。って言われてるのかな?

  2. kikiさん、由紀子さん
    「自分のために生きる」は難しいと実感してます…今は「自分のために生きる」は「自分を許す」が出来ない私にはまだまだです
    でもいつかは「自分のために生きる」そんな時がきたらいいですね
    心の奥底には娘への罪悪感で「自分のために生きる」を拒絶してる自分が…
    とりあえず無理をしないで、ひたすら怠け者で生きてみます
    太陽の温もりや風の匂いを身体で感じられるようになるまで息を吸って吐いてです

    • 美響さん、「ひたすら怠け者で生きてみる」という言葉を頂き、ハッとしました。

      実は、私も試してみたことがありました。
      その時は、「ベキ、ネバ、を捨て、人のために無理して動かない、自分の気持ちを第一優先」、これが私の「怠け者になる」キーワードでした。
      すると素敵な結果が待っていました。
      初めて太陽のぬくもりや風の匂いを体いっぱいに感じ、時が経つのを忘れて自然の美しさに見入っている自分の姿を見つけたのです。
      何もしないでずっと「怠けている」と思っていたけれど、実はちゃんとその間も自分に必要な「なすべきことをしていた」のだと知りました。

      美響さん、大きく息を吸って空を見上げてください。
      何か今までには感じなかった素敵なメッセージを体で感じることができるようになるかもしれませんよ(*^_^*)

  3. kikiさん。
    改めて、自分の為に生きるって難しいと
    実感しています。
    昨年は悲しみと自分が1日を生きる事に
    精一杯。沢山のなぜ?と戦いながら。
    今年は、もうそろそろリハビリ的に働いてみようか?とか、いや、まだちょっと怖い。
    とか葛藤。
    自分が安心して暮らす為、色々トライしてみようと思いながら、
    何者でもない自分も心地よいなぁ。
    と感じます。
    このまま専業主婦がいいとは、思いながら。
    都合のいい時だけ近所で半日くらい日雇いのバイトくらいならできるかなぁ?
    探してみようかなぁ?なんて
    色々考えちゃう日々です。

    • 由紀子さん、そうですよね・・・、子供を亡くすまで思ってもいませんでしたが、それまで母として生きてきた者にとって「自分のために生きる」って難しいなあと私もつくづく思います。
      それまでは「子供にお母さんが頑張っている後ろ姿を見せるんだ!」と、どんなに辛くても笑顔で頑張ってきたのに、もう、そんな「子供のために生きる」という理屈づけは自分の人生にはない・・・。

      リハビリ的感覚、いいなあと思います(*^_^*)
      自分にできそうだと思うものにトライしてみて、「あ、これならいい感じ」と思ったらもう少し増やしてみる、で、「うーん、気力が続かない」と感じたら、休みながら、とか、無理がなくていいですよね。

      私もいろいろやってみましたが、まだまだ自分は「昔の自分」のように「できる」と思い込むところがあって、結局できないと自分をなじってしまう悪い癖があると知り、その心の悪癖を修正することに今は集中することにしました(^_^.)

      それと、55歳という年齢も「家族のため、社会のため、もう十分一生懸命働いたから、これからの15年は自分の好きな事だけして生きてもいいかな」という考えの後押しをしてくれています。
      70歳まで15年、それまで健康でいられるかどうか、生きているかどうかもわからないから、最後の15年ぐらい誰のためでもなく自分のために生きてもいいかなあと思いました。
      それと、そのような暮らしの中から、自分のために生きているだけなのに、意外にもそれが良い影響を周囲にももたらすことも知りました。
      自分の心に余裕があってこそ、人のために何かできるのだと初めて知ったところです。
      以前の私は「すべき」「せねば」と、考え、しなくても良いことまでやり、イライラして周囲に八つ当たりしていた気がします(^_^;)

      仕事も自分が楽しめる程度のものだったらやってもいいかなあと思うのですが、今は「節約生活も楽しい」と、そして、それを支える専業主婦も立派な職業と考え、これまではフルタイムの仕事ばかりで、会えなかった人との付き合いを楽しんでいます。

      なーんて、偉いことを書いてますが、年のせいもあると思うのですが、正直言って子供を亡くしてから「気力」「体力」「記憶力」が極端に落ちてしまって、以前のようには働けないという今の自分を受け入れてゆるりと生きているというのが本当のところかも(^_^;)

      • kikiさん、そうなんです。
        自分の柱であった子供を守る!ってことから
        放り出された状態で何ができるのか?
        何ができないのか?
        トライしてみようと思います。
        ゆるりと、気張らず。
        できること探しにしてみよう。
        日雇いのバイトは毎日違うことを違う所でやるみたいです。
        つまり、今日失敗しても、次の日仕事は違う所。
        それって、今までないことだから
        やってみようと思う。

        短時間働いてみて、自分に合う事が見つかれば腰を据えてもいいかなぁ。と思います。

        私達の年代、年金がもしかしたら75歳までもらえないかも?って聞いたらやっぱり不安になりますもん。
        まあ、偉い人の考え次第で生活が変わるのはどうかと感じますが。

        いま、兄もアルバイトのような生活から脱却しようとしています。
        決まればわたしももう少しゆるりと生活できるかな?
        人のためじゃなく、自分の為にゆっくり生きて、美味しいもの食べて、遠くにいる友達にたまに会える。
        そんな生活ができたらいいなぁ。

      • 由紀子さん、いいですね、「日雇いのバイト」!
        実は私もそういう感じの仕事をしてみたいと思っていました。
        その中から、『あれ、これ意外に好きかも!』というものが見つかったら、きっとやっていても無理がないのかなあなんて思います。

        「人のためじゃなく、自分のためにゆっくり生きる・・・」、子供を亡くし傷ついた心を癒すには大切なことと心から感じます。
        由紀子さん、何か見つかったらまた教えてください!
        楽しみにしています(*^_^*)

      • 由紀子さん。時間が少しずつ流れていってますね。Kikiさんと由紀子さんのやりとりを見て、あったかい気持ちになってます。
        いつかお二人に会いに行きたいな。

      • とり子さん、はい、いつかみんなで同窓会を開けたらいいなあ~、と、私も思います(*^_^*)

  4. Kikiさん、喪失の痛みって、私は少しずつ薄れている気がします。でも、薄れることもまた、痛いことだったりします。
    さきちゃんから問われてることは生前も今も同じような気がして。「私がいなくてもちゃんと生きてる?私のせいにしたらダメだよ」と。
    さきがいなくなって空っぽのような私は、ちゃんと私の人生を生きていなかったんだと思います。

    BGMすら聴きたくなかった時期を過ぎて、今ならKikiさんの言う日常の音を少し心地よく感じたりして。日々を過ごしていくしかないですね。自分で、なんて性懲りないんだろうって呆れたりしますが、Kikiさんやここの仲間の皆さんもいるし。生きてみます。

    • とり子さん、「薄れることも痛いこと」・・・
      同じような表現をどこかで聞いたか読んだ気がします。
      そして、私もそう感じた時期がありました。
      痛みを以前のように強く感じないのは、自分の失くしたわが子に対する愛が足りないからなのではないかと、それまでとは異なる新たな自責でした。

      でも、本当はそうじゃなくて、かさねに対する愛が勝り、かさねの自死も含めまるごとあるがままのかさねを受け入れ始めたことで新たな絆が結ばれつつあったから喪失の痛みが薄れてきていたのだと今振り返ってみると思います。

      さきちゃんの「ちゃんと生きてる?」という言葉が私の心にもとっても優しく響きます。
      かさねもきっと同じように言ってニコニコしながら見ていてくれているなと感じます。

  5. kikiさん。
    耳鳴りのメカニズムとグリーフワーク
    似てますね。
    確かに悲嘆から逃げるために仕事したら
    追われて追われて鬱状態でした。
    何ごともほどほどにですね。
    私もたまに耳鳴りがします。
    邪魔にならない程度に音楽を流すのがいいんですね。やってみよう。
    寝付くとき、歌詞のある曲をかけてたら
    聞き取ろうととして眠れなくなったことがあります (^_^;)

    バーガーキングですか。
    たまにジャンクフード食べたくなりますね。
    うちは今夜はケンタッキーを旦那が買ってくるって張り切ってます。
    私はサラダだけ作ればいいので楽チンです。
    上手に手抜きして笑ってられる方がいいですもんね。
    家族も自分も。

    • 由紀子さん、
      「上手に手抜きして笑ってられる方がいいですもんね。
      家族も自分も」
      『ああ、これ、娘を亡くすまで、これが私にはできなかった!』と、つくづく感じました。

      で、自分自身も家族も追い込んでみんなトゲトゲ・ザワザワしていた気がします。
      自慢にもなりませんが、私は「べき、しか」人間でした(^_^;)
      そうなんですよね、「上手に手抜き」、雑誌に出てくるような完璧主婦じゃなくても誰も気にしない
      それよりも、肩の力を抜いて、笑ってられるほうがずっといいです

      最近、遅ればせながらようやくそのことに気づき恐る恐る実行しています、私(^_^;)
      そしたら、『あれ?、なんだ?、誰も非難したりしないぞ! それどころか自分だけじゃなくて周囲の人もニコニコだ!』と知り感動しています。

      • わかるー。って読んでて笑いました。
        外面がいい分、家族には厳しかったり。
        智也にもずいぶんと窮屈な思いをさせたと
        思います。
        ジャンクフードでもほか弁でも
        一緒に座ってニコニコ食べれば良かったなぁ。
        今ならわかるのに。
        ごめんね。智ちゃん。
        そういえば、中学に上がった瞬間から
        智ちゃんって呼ぶなー!!って
        私にもバァバにも言ってました。
        恥ずかしかったらしい…。
        ふふふ。ちょっと思い出し笑い ( ̄▽ ̄)

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