ニューヨーク、ニューヨーク

四度目の誕生日の記念旅行

亡くなった娘の四度目の誕生日が迫り、私は心がざわつき始めたことを感じていました。これまでの三年と半年の経験から、誕生日や命日は辛いのはもちろんのことですが、実はその当日より「その日が来る」と考えて過ごす「前」の期間が一番辛いことを知っていたので『今年の娘の誕生日は、ただ悲しみにくれるんじゃなくて、あの子の誕生日を記念し何か心が躍るようなことを前もって計画しよう』と考えていました。

そんな時です、地元でたった一つの旅行会社が毎年ニューヨークバスツアーを計画するのですが、今年の日程が六月の十四日から娘の誕生日である十八日であることを発見しました。

ニューヨークは行ったことがなく、また、娘がアメリカ留学中にホストマザーがニューヨークのマンハッタンにあるメトロポリタン美術館に連れて行ってくれたと話していたことを思いだし、私は『これは、絶対参加しなくては』と渋る夫を説得し二人でバスツアーに参加することにしました。

旅行から帰って

私にとっての生まれて初めてのニューヨーク旅行は当初考えていたより楽しく、とても素敵な記念旅行となりました。旅行の詳細はいつか時間のあるときに書きしるせたらと思いますが、今日は娘の親友さんに宛てたメールの中から抜粋し、旅行から帰った後の私の心の変化を忘れないうちに残しておきたいと考え書き記します。

メールをありがとうございます!
返事が遅くなりごめんなさい(^^;
実は、かさねの誕生日にあわせてニューヨークバスツアーに参加していました(^^)
地元にたった一つある旅行会社が、毎年ニューヨーク旅行を組むのです。
アリゾナからニューヨークは遠いのでなかなかいけませんが、オハイオからでしたら車で10時間ほどで行けるんですよ。
オハイオにいる間に行きたいとずっと考えていたのですが、今年はかさねの誕生日前の14日から誕生日の18日にかけてツアーが組まれ、まるでかさねが「お母さん行こうよ!」と言ってくれているように感じ、夫をなんとか説得し参加することができました!
結果は、「Great!」(^0^)v
行く前は乗り気ではなかった夫も考えていたよりもずっと良かったと喜んでいました

旅行の間かさねがずっと一緒にいてくれていたのだと思います。
出発前日まで雨模様の毎日が続いていたのに旅行中はずっと快晴、自由の女神像も青空の下、まじかで見学でき感動でした。
また、行きのバスの中でのくじ引き大会ではニューヨークお土産のキーホルダーが当選、そして帰りのバスの中でのくじ引きでも5千円相当のギフト券が当選しこれにはびっくり!
と、いうのも夫も私もくじ運が悪く、こういうくじ引きで当選することはこれまでに一度もなかったのに今回は一度に二回も!
二人で顔を見合わせて「かさねからのプレゼントだね」とかさねに感謝しました。

ニューヨークは東京のように近代的で人が多くごみごみしていますが、一つ違うのは建物の多くがレンガや石造りで歴史的建造物が多くヨーロッパ調だというところです。
お買い物にいくならニューヨークは東京よりブランド品が安いかもしれません。
ブロードウェイのショーを見るのも東京よりは割安感がありました。
しかし、私達はその二つともパス、フリー時間に美術館やタイムズスクエア、そして地下鉄やバスを利用し観光三昧でした(^_^)
毎日夜遅くまで歩き回り一日一満歩以上はゆうに歩いていたと思います。

実を言うと、私は、オハイオに来てからまるで三年前の自分に戻ってしまったかのように鬱々と引きこもりの毎日を過ごしていました。
でも、5月の末にこの地でようやく自分が所属できる場所を見つけました。
ひとつは、毎週火曜日にミーティングがあるAL-ANONというセルフサポートグループです。
これは、ACA(アダルト・チルドレン・オブ・アルコホリツク又は機能不全家族の中で子供時代をすごし大人になってから生きづらさを抱えている人)と基本的に同じ考えに基づき設立された世界的規模の団体ですが、違うのはACAは、アルコホリックを親に持ち大人になってから問題を抱えている人たちの集まりであるのに対し、AL-ANONは、範囲がもう少し広くアルコホリックの伴侶や家族、友達を抱えながら今現在人生に問題を抱えている人たちをも対象にしている点です。
仲間と共に心の平和を求めて毎週語り合うことができるこの集まりは私に「生きづらさを抱えているのは私一人じゃない」という安堵と「毎日少しずつでも自分を変えていけたらいつか心の平穏を得ることができる」という希望を与えてくれ孤独から救ってくれました。

二つ目は子供を亡くした親の会、Compassionate Friendsです。
こちらは、月に一回の集まりですが、そこで同じように子供を自死で亡くした人と出会いお友達になりました。
彼女は70歳で42歳の息子さんを自死で約一年前に亡くされています。
彼女の紹介で地元の教会が主催するグリーフ・サポートの会にも毎週水曜日参加することになりました。

こうしてかさねを亡くす以前の自分であれば出会えるはずのなかった人たちに出会い交流を深められるのもかさねのおかげです。
過去も未来も、そして他者を変える力も私たちにはないけれど、変えようと思えば自分を変えられる、そして幸せの青い鳥は本当はいつも自分の中にあったのだと気が付きました。
でも、これまでは外ばかり見つめていて「もし、自分の身の上に起きたことが起きていなかったら幸せになれたのに」「もし、未来がこうなったら幸せになれるのに」「もし、誰誰がこうであったら自分は幸せになれるのに」と、自分の努力ではどうにもならない頼りないものに自分の幸せを託していたように思います。
本当は、どんな状況であっても、自分の生き方考え方をほんの少し変えるだけで心の安らぎを得ることができ、人生は幸福に満たされるのだとわかりました。
とはいっても、これまで55年間も生き慣れ親しんだ私の思考の悪癖を変えていくことは至難の業です。
しかし、「一人じゃない」と知ることができ仲間と一緒にゆっくり焦らず頑張ればよい、肝心なのは諦めずに毎日毎日鍛錬する事なのだと学び嬉しく感じています。

考えてみると、いつかヨガの先生が言っていたことと同じです。
「人と比べず、うまくなろうとか、何かを成し遂げようとするために頑張るのではなく、ただただ毎日取り組みなさい。さすればいつの日が自分の変化に気付くであろう」

かさねは、「お母さん、私、諦めない」と体調を崩し入院したときにメールをくれました。
でも、生きる苦しさにこの世での人生を諦めてしまいました。
日々苦しみの中に生きるより、かさねにとってはこの世を去ることの方が楽に感じられたのだと思います。
かさねの苦しみを取り去ってあげたかったけれど、残念ながら私にはそんな力はありませんでした。
かさねを心から愛する良い母親だったら救えたはず、救えなかったのは自分の愛が足りなかったから、自分の力が足りなかったからだと何度考え泣き叫んだかわかりません。
しかし
、どんなにしても私はただの一人の人間、わが子であっても自分ではない他者の考え方や人生を変える力などあろうはずもありませんでした・・・、そんな風に考えていた自分こそが愚かであったのだと思います。

後に残された者は愛するものを失った悲しみを抱きながら生きることになります
それでも、罪悪感や自責を持つことなく純粋にかさねを愛おしく思う気持ちで涙する時、涙しても自分の人生を生きる喜びを見出すことができると今初めて心の底から感じています。

今回のニューヨーク旅行はそれを私に教えてくれたように思います。
私はこれからも死ぬまでかさねを思って、かさねに会いたくて、話したくて涙すると思います。
それでも、自分の人生がみじめなわけじゃない、私はかさねが自らの命をもって教えてくれたことを心にいつも留め、仲間と共に自分の人生を喜びを持っていきぬきたいと思います(^_^)

娘の形見のカメラで写した自由の女神像です。夢と希望を抱いてこのアメリカと言う地にたどりついた移民を出迎えた自由の象徴の像です。

 

ニューヨーク、ニューヨーク」への8件のフィードバック

  1. kikiさん、
    たしかに楽しむことに罪悪感とか、
    モヤモヤはありますね。
    でも、kikiさんの真似をして、
    ラップ風船。
    モヤモヤもポイッてしてみました。
    モヤモヤもある。罪悪感もある。
    でも、生きるなら楽しんだり、
    笑ったりして生きたいな。って
    思います。
    いっぱい笑って、いっぱい泣いて、
    智也は見ててくれるかな?

  2. kikiさん、
    かさねちゃんのお誕生日に合わせて
    旅行なんて素敵。
    生きる喜び。いいですね。
    旦那さんと、かさねちゃんとニューヨーク
    観光。素敵。
    わたしも旅に出てみようかなあ?
    楽しい事、美味しいもの食べて
    生きる喜び感じてもいいんだよね?
    世間の事は考えないで、ちょっと
    温泉でも行ってみようか?

    • 由紀子さん、そうですよ、生きる喜びを感じてもいいんですよ!(*^_^*)
      毎日悲しんでいても、笑っていても、何をしていても世間は勝手なことを言うのだから。
      でも、真の友は私が喜んでいたら一緒に喜んでくれるし、泣いていたら一緒に泣いてくれる、それだけでいいと思えるようになりました。
      それに、案外と自分が気にしているだけで世間の人は気にしていないことも多くあるのも事実だとわかりました(^_^.)

      それで思い出したのですが、昨日のグリーフ・ワークショップで見たビデオの中で「喜びを感じたり楽しいことをすることに罪悪感を感じてできない」という遺族の話がありました。
      「亡くした子供をおろそかにしているように感じてしまう」
      「まるで、悲しんでいないと自分は悪い母親のような気がする」
      「『子供を亡くしたというのに、あの人ったら、ニコニコして毎日遊んでばかりいる』と人から思われるんじゃないかと不安」
      などなど

      もちろん、人によってはずっと子供を失った母として悲しみに暮れながら生きたほうが生きやすいと感じて喜びを拒否して生きる人もいるかもしれない、それもその人の人生で、何が良くて何が悪いという事はないと思います。
      でも、私は、この後も生きなきゃいけないんだったら悲しみでけだはなく生きる喜びも感じながら生きたいと思います。
      喜びを感じるのはまたまだなかなか難しいけれど、悲しみも喜びも感じながら生きたい、そう思います。
      そして、かさねはそんな私を微笑んで見守ってくれると信じています(*^_^*)

  3. グリーフジャーニーも進むとKikiさんみたいになっていくのかな。
    楽しみ、生きる喜び。良かったですね。かさねさん、一緒にいるんでしょうねきっと。

    • とり子さん、ありがとうございます(#^.^#)
      この日の喜びがずっと続いたら良いのですが、ホント難しいです。
      でも、これが生きるってことなのでしょうね。
      喜びも悲しみもあって人は優しく穏やかになれるのかもしれませんね。

  4. kikiさん、素敵な旅のお話ありがとうございます。
    何よりkikiさんがかさねさんとご主人と三人で楽しい旅行が出来たことは私も嬉しいく、読んでいてワクワクしました。
    私も娘が三重県の親友に会いに行く約束をしていたことを知り、行かねばと連絡もしないで片道5時間運転して行って来ました。
    嬉しいサプライズでと喜んでくれて、娘の代理で一緒に友人と二日間過ごしてきました。
    以前娘が親友に会いに行ってから丁度四年の月日が経ってました。
    本当なら娘、親友、次女で笑顔の写真を残せるはずでしたが…親友と次女の笑顔の写真には娘は写ってはいませんが一緒に居たと確信してます。
    娘が一緒に楽しんでいると思えるから
    楽しい事を娘のためにもしていこうと思ってます。
    でも昨日はワールドカップ一色のテレビに娘がユニホームを着て応援に行っていた姿を思い出して、一日メソメソしてました。
    毎日がちょっと喜んだり、泣いてみたり大忙しです。
    でも生きてます。

    • 美響さん、コメントをありがとうございます!
      美響さんのコメントの最後の「でも生きてます」と言う言葉にとてもうれしく『ああ、あなたが生きてくれている、なんてありがたい』と思いました。
      美響さんもお嬢さんを胸に親友さんに会いに行かれたのですね!
      良い時間を過ごされたようで私もとても嬉しく思います。

      「喜んだり、泣いてみたり」、まさしく私のニューヨーク旅行も文字通りそんな感じでした。
      でも、これまでと一つ違うのはそこに「喜び」が加わったことです。
      「生きる喜び」を感じたのは初めてかもしれません。
      娘を思い涙していても自分の人生を喜びをもって生きることができるかもしれないと感じた初めての瞬間でした。
      なんといえば良いのか・・・、そうですね楽しいことをしていても「罪悪感」を感じず生きる喜びを感じ癒される思いとでもいうのか・・・、私と夫が仲良く喧嘩したり笑ったりしている様子をかさねがそばで微笑んで見ている姿を感じながら日々を生きることができたというか・・・
      きっと、これからもまだまだ「辛い日」「悲しさに打ちのめされる日」があることと思います。
      でも、大丈夫、娘がそばにいることを忘れない限り私は生きていける、と感じます。

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