相手の気持ちも尊重し自分の気持ちも尊重する

毎日が練習

前回カウンセラーに泣き泣き怒ちゃったことを書きましたが、カウンセラーだからこそ遠慮なく自分の気持ちをぶちまけることができたものの『これが夫の親戚や知人だったらそうはいかないなあ』と、相手の「助けてあげる」と言う気持ちを尊重しながら自分の気持ちも尊重し「それは助けになっていない」と相手に上手に伝えるにはどのようにしたらよいのかとあれから考えていました。

そんな時、ちょうど良い練習の機会がやってきました(^_^)

夫の両親の62回目の結婚記念日の日に

八月二十一日は夫の両親の62回目の結婚記念日でした。

私は夫の両親がとても好きです。自分の親からはもらえなかったものを持っている人たちだからです。時々、前触れもなく訪ねてこられることにはストレスを感じるときも度々ですが、白人でもアメリカ人でもない私を分け隔てなく家族の一員として扱ってくれ「あなたが息子の嫁で私たちは本当に嬉しい」と言葉だけではなく態度でも示してくれ、訪ねるたびに大喜びのビッグハグで迎え入れてくれる二人に会うと「自分が受け入れられている」と感じることができます。

それでも、お互い人間ですから、一緒にいればときおり気持ちがすれ違うこともあります。特に娘を亡くしてからちょっとした言動にも傷つきやすくなっている私は、前回カウンセラーに対して切れたように「娘を失った悲しみを理解して!」と切れそうになる時があります。

そんな時、これまでは自分の気持ちに嘘をついて顔で笑って心で泣いていました。我慢していたんです。『わかってもらえなくても仕方ないのだから』と、自分の気持ちを押し殺していたんです。でも、そうするたびに鬱になる自分を見つけていました。自分の気持ちをないがしろにするということは、自分はそれだけの価値しかないということになるから自己否定につながってしまい鬱になってしまうのかもしれない、と、自分なりに思い始めていた時にカウンセラーに切れたのです。

これはこれで自分の気持ちを大切にできたので良かったと思うのですが、自分を守るために相手を攻撃してしまった形になってしまった事に対しては反省していました。私を助けようとして言ってくれていたことには違いないからです。

相手の気持ちも尊重し、かつ、自分の気持ちも尊重する言い方ってどんな言い方だろう?

カウンセリングの後、そんな風に考えていました。

そんな時です、練習の機会がやってきたのは。

夫の両親に結婚記念日のお祝いにパイを焼いて持っていったところ、とても喜んでくれていつものように私たち夫婦をリビングに招き入れ夫の両親が昔話を始めました。夫のお母さんは私と同様アルコール依存症の父を親に持ち子供時代を悲しみと混沌の中で過ごした人です。そのことを知っているお義母さんは、私に対して特別の親近感を持っています。

お義母さんは、アルコール依存症の父親に苦労させられたこと、そしてどんなに辛い子供時代を過ごしたか話して聞かせてくれました。そして、そのあと一呼吸おいてこういいました。

「子供の頃は辛い思いをたくさんしたけれど、私は良い夫とこんなに素晴らしい子供たちに恵まれ何の不自由もなく暮らすことができ本当に幸せだと思うわ。Kikiも、そう感じてるでしょ?」

同意を求めるお母さんの言葉に私は一瞬何と答えたらよいのか沈黙してしまいました。

確かに、今の生活は明日の暮らしを心配する必要もなく何の不自由もない。優しい夫と優しい夫の両親にも大切にされている。でも、幸せかと聞かれれば、娘を自死で亡くして嘆き悲しんでいる私にはとても「はい、幸せです」と答られる気持ちにはない。『ああ、お義母さんはカウンセラーと同じことを言っている』と思いました。

でも、ここで泣き泣き「あなたは私の悲しみがわからないの?」と、怒ることはできない。お義母さんは悪気があって言っているわけではないのだから…

正直に、でも少し困った顔で、そして穏やかに、私はお義母さんの問いかけにこう返事をしました。

「子供を亡くして二年と経たない今の私にとって、幸せはとても遠いところにあるように感じます。だから、何と答えたらよいのか正直言ってわかりません・・・」

お義母さんは、はっとしたように「そうよね、そうよね。ごめんなさいね」と慌てて言い、私の娘の写真を寝室に飾って毎晩娘のために祈っていると話してくれました。敬虔なカソリック教徒のお義母さんは毎晩寝る前にロザリオの祈りを欠かすことはありません。お義母さんはその祈りに私の娘のことも込めていると言っているのです。

痛みとは傷を負った者しか感じることができません。私の娘が亡くなったことを知ってはいてもお義母さんにとってはずっと昔のこと、つまり過去のことになってしまい、人前では笑顔を見せている私が、今もなお娘を思い嘆き悲しんでいるということと結びつかないのだと思います。

地震の被災地と同じかもしれません。ニュースで繰り返し報道されているときは、被災地以外の人も関心を向けますが、半年もすれば他の真新しいニュースに関心が向き忘れ去られる。根拠もなく、既に復興は進みみんな元の生活に戻ったと思ってしまう。でも、何かのきっかけでその土地を訪れ生々しい傷跡が今もなお残っている様子を目の当たりにたとき『ああそうだった』と気が付く。被災地と違うのは、心の傷は見えないこと。そして、周囲の皆に合わせて表向き元気にふるまっていれば、傷はもともとなかったかのように見過ごされてしまうということ・・・

ホームパーティでのこと

お義母さんと私との間でこんなやり取りがあった翌週金曜日に、今度は夫の兄夫婦と甥たちを招いて我が家で夫の両親の62回目のホームパーティを開くことになりました。家族が集まることが何よりの喜びである夫の両親にとって久しぶりに子供と孫が全員集まるこの日は特別の日です。

総勢12人の食事を用意するということは私にとって初めての経験で、前日からケーキを作ったりパイを焼いたり、鶏肉の下ごしらえをしたりと、久しぶりに大忙しでした。そして、当日、三々五々皆が集まり始めたその中に主役の夫の両親の姿も見えました。『主役は何もしなくていいから手ぶらで来てね』と言ったにも関わらず、お義母さんはたくさん人が集まるから食べ物はいくらあってもいいとマカロニサラダとフルーツサラダを作って持ってきてくれました。そして、花束まで。

『え?なんで花束なの?』と思っていると、お義母さんが「今日は家族みんなが集まる日だから、かさねも一緒にと思って花を買ってきたの。ほら、Kikiはいつも遺影にお花を飾っているでしょ?」と言ったのです。お義父さんも隣で微笑んでいます。

『今日は、お義母さんとお父さんの結婚記念日なのに、私の死んだ娘のことまで気にかけてくれている…』

胸があつくなりました。

そして、あの時正直に自分の気持ちを伝えて良かったと思いました。そうでなければ、私の娘のことは忘れられていたに違いないのですから。

相手の気持ちを尊重して言ったつもりでも相手に伝わらない時もあります。でも、ちゃんと伝わるときもある。そして、自分の気持ちも尊重された。素直に「良かった」と思いました。ようやく一つ大きな山を越えたような、そんな気持ちになりました(^_^)

メレンゲバイとパンプキンケーキ

手前は、クランベリーメレンゲバイ、そして奥に見えるのはパンプキンケーキです(^^)

 

 

相手の気持ちも尊重し自分の気持ちも尊重する」への2件のフィードバック

  1. kikiさんももです。
    ダンナ様のご両親にkikiさんとかさねさんのお気持ちが伝わり良かったです。
    誰かを傷つけないで自分の痛みを伝えるのはとても難しいことですね。
    ご両親が優しい方で良かったです。
    山を越えられて良かったです。
    諦めないで伝えたkikiさんは素晴らしいです。

    私は今日、娘の葬儀を執り行ってもらった葬儀屋さんの奥さんに会いに行きました。
    葬儀の後に奥さんから5年前に32才の娘さんを病気で亡くされたことを聞きました。
    母娘でSMAPが大好きだったとこ。
    SMAPの解散のニュースを聞いて奥さんと娘さんのことをずっと考えていたからです。
    SMAPとお墓の話をしました。
    夏はお花が枯れないようにするのが大変なのよ。と、足繁くお墓に通っているとおっしゃっていました。
    ボランティアで市営墓地の花壇の世話をされていることも。
    私は納骨する決心がつかないことを話しました。

    ただそれだけです。
    顔を見て数分話しただけ。
    大切な娘さんを亡くされて同じ思いをされている近所で唯一の人。
    娘さんへの愛情で溢れているのを感じます。
    こういう方がkikiさんのおっしゃる悲しみと向き合いながら娘さんへの愛と共に凛と生きていらっしゃる方なのかな。と、思いました。

    • ももさん、何も言わずとも気持ちを分かち合える方を見つけられたのですね。その方は、五年の間ずっと娘さんに語りかけてこられたのだと感じます。ここまで来るまでにはきっといろいろな思いを通り抜けてこられたのでしょうね。私もいつかその奥さんのように悲しみと向き合いながらも娘への愛と共に凛と生きられるようになりたいです(^_^.)
       素敵なお話をありがとうございました。

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